28. 血に縛られた無農薬乙女と口パクの人
こんばんは。
今日は電車に乗りました。
私が乗る福北ゆたか線は、2両編成の綺麗な電車です。
クロスシートもあったりします。
1両の時もありますし4両の時もあります。
僕が乗るときは基本的に2両です。
何でこんなに両編成の話をしているかと言うと、今日は電車の中で出会った変な人の話をしようと思っているからです。
いや、そんなに両編成は関係なかったです。
お昼過ぎに博多に向かおうと地元の駅から電車に乗りました。
電車内感じはちょうどいい感じ。
丁度いい感じってのはつまり「席が2つ3つ空いていて、自分が座る席を少なからず選択できる」感じ。
因みにガラガラなのは「めっちゃいい感じ」です。
でね、私は25,6くらいの若いサラリーマンと、50歳くらいの「サービス業かな。土日は忙しくて平日お休みかな。映画でも見に行くのかな」って感じのおじさんの間の席に座りました。
本当は「ちょっと可愛らしい女子高生の隣に座る権利」を持ってたんですけど、前日に冤罪のニュースを見た私はその権利を一緒に乗った35歳くらいのメガネ小僧に譲りました。
私は最近ハマっている「三十代あずましくない乙女たち」のPodcastを聴きはじめました。
面白いですよ。是非聞いてみてください。
そしてあっという間にお隣の駅に着きました。
ドアからは80超えてるんじゃないかという随分と腰の曲がったおばあさんが乗り込んできました。
「席譲る速さ選手権関東ベスト8、でも出来ればそういう人は乗ってきてほしくない熱い気持ち選手権関東ベスト4」の僕(現在は福岡住)は、例によって例のごとくササっと席を譲りました。
譲ろうかどうか迷う周囲の人間に凄まじい優越感を感じながら一瞬で譲りました。
でも「出来ればそういう人は乗ってきてほしくない熱い気持ち選手権関東ベスト4」なので、「やっぱり座りたいな~。」とずっと思ってました。
なのでなので。
もしかしたら席が空いているのでは?と思い、私は隣の車両に移動したのです。
するとどうでしょう。
赤ちゃんを膝の上に抱える30くらいの亜麻色の髪の乙女の隣に一席空いていたのです。
この亜麻色の髪の乙女こそ、変な人。
「血に縛られた無農薬乙女」なのです。
この亜麻色の髪の乙女(以下、島谷)はソロではありませんでした。
友人と思われる若いママ(同じく赤ちゃん膝の上)とペアでの乗車です。
二人はママトークをするでもなく、しようもない血液トークを始めました。
所謂「◎型の人ってアタシ無理ー!」とかってやつです。
初対面の人間とのきっかけ作りならまだしも、この血液トークを本題にしようとする女性が私は物凄く嫌いなのですが、島谷は私の予想を遥かに超える血に縛られた女だったのです。
島「私はさ、ほら、AかOの人としか仲良くなれない人じゃん?」
女「そうだっけー!??」
島「そうだよー!ABとかBってだけでもうムリムリ!」
女「何それそんな変わんないって(笑)」
島「いやほんとなんだって、もうアレルギーみたいなもんなんだって」
女「いやでもパッと見じゃわかんないじゃん笑」
島「そう来ると思った。でもなんとなく分かるんだよね。顔で血液型」
女「ほんとに~?」(もうここら辺でペアの女は全然興味ない感じ)
島「じゃあさじゃあさ、この中の人でABかBの人当ててあげる」
女「え~いいよ~(笑)」
島→女「コソコソ」
そうです。
恐らく、島谷は私を「ABかB」の男だと予想したのです。
しかしそれを確認するでもなく島谷と女は全く血の話をやめ、子供の話を始めたのです。
島「私さ、この子に無農薬の物しか食べさせたくなくって。」
女「そうなんだ。でも高いしさ、そんなに売ってないでしょ無農薬の野菜なんて。」
島「う~ん。でも何とか頑張ってる。砂糖もあんまり食べさせたくないんだ~。」
女「気にし過ぎだって~。」
島「そうかな~。」
その話が出てきて気づいたのですが、島谷の赤ちゃんは結構痩せていたのです。
無農薬無砂糖に縛られ過ぎてちゃんと栄養取れてないんじゃないのと急に心配になりだしました。
どうやら女も同じことを感じているようで、さりげなくアドバイスを送るのです。
女「でも体格は違うとはいえさ、私達だって農薬使ってる野菜食べるし、砂糖も食べるでしょ?変に意識した方が栄養のバランス悪くなっちゃうよ?」
島「でもな~。」
女「まあユウの自由だけどね。」
この言葉で島谷(ユウ)と女の友情がそこそこ浅いことを知った頃、博多駅に到着。
ドアから降りるその時。
島「あ!すみません!あの、血液型教えてもらえませんか!?」
!!!!!!!!!!
私「あ、Aですね。」
島「あ、なるほど。ありがとうございます。」
本当はB型ですが、私はこの30分で物凄く島谷のことを嫌いになったので嘘をつきました。
これで少しは島谷も血の束縛から解放されるんじゃないか。
嘘は私の優しさでもあったのです。
満足げにホームの階段を下りる私。
背後からかすかに声が聞こえました。
島「あんまり外さないんだけどな。本当はABとかBなのに話盗み聞きして嘘ついてたりしてね。」
女「そんな嘘つく意味ないでしょ。そんなんどんだけ性格悪いんだよ(笑)」
おしまい。
今日のBGM
結婚したくなった。
口パクの話も書こうと思いましたがなんとなく面倒なので明後日にでも書こうかな。
島谷と女の話は標準語に変換しています。