51. 『あの頃。 男子かしまし物語』
こんばんは。
cakesで相沢直さんと劔樹人さんのアイドル(ハロプロ)論対談を見て購入。
"カネもない、仕事もない、彼女もいない。
情けなさすぎる男たちの、遅すぎる青春の日々
もう戻れない、愛くるしい記憶です。
ハロプロへの熱い愛、仲間との出会いと別れ、うまくいかない日々、そしてひとりの友人の壮絶な死。
すべての切なさを笑いへと塗り替えて繰り広げられる、比類なき青春叙事詩!"
EYESCREAMで連載していた劔さんのマンガコラムを書籍化したものだそう。
ザックリと説明すると、現在神聖かまってちゃんのマネージャーとして活躍する劔樹人さんが約10年前、おかしな仲間達と熱狂的にハロー!を応援していた青春時代のお話。
真っ暗な部屋で落ち込んでいた劔さん。
そんな姿を見て心配した友人がくれたCD-Rをぼんやりと見ていた劔さんは、当時15歳の松浦亜弥に衝撃を受ける。
翌日からズブズブにハロー!にハマる劔さん。
愉快な仲間と出会い、少し遅れた青春時代を謳歌する。
すごく羨ましかった。
彼らのような状況であれば、真っ暗な部屋で落ち込むのが普通なのかもしれない。
少なくともアイドルにうつつを抜かしているような状況ではないはずだ。
しかし彼らは皆、金銭的に苦しい生活を送りながらも少年のような純粋な心でアイドルを追いかけている。
いや、皆まともな人間でないことは確かなのだけど。
中盤、こんな言葉が出てきた。
「劔さん、俺らくらいの歳で、学生のときが一番楽しかったって奴多いじゃないですか。若い頃の、学生の頃が人生のピークって寂しくないですか。俺は、学生の頃より大人になってどんどん楽しくなって、今が一番楽しいですよ。」
これはこの一冊を簡潔に表す台詞で、終盤、故人を懐古する劔さんもまたこう言っている。
「もちろん、人生で今が一番楽しいです。それでも、ときどきふと思い出します。みんなと過ごした、あの頃を。」
2、3年前、AKBに熱狂的にハマっていた頃、地元の友人とともに頻繁に握手会に通っていた。
同じCDを何十枚も買い、劇場に申し込み、ネットで沢山のオタク仲間と知り合い、本当に周りが見えなかったというか、とにかくAKB(とりわけ前田亜美ちゃん)に熱中していた時期があった。
今思い出してもかなりイタいし、日本学生支援機構には足を向けて眠れないが、友人との痛々しい日々は本当に楽しかった。
アイドルは性質上他の趣味とは違ったドラッグ的な楽しさがあり、とにかく他のことがどうでもよくなる。
でもそんな経験がありながらも彼らのことが尚羨ましいのには理由があって、今から約10年前となると、モーニング娘。が絶頂(からちょっと過ぎた辺り)の時代で、私が住んでいる福岡のド田舎でもそれはもう馬鹿のように流行っていた。
今でも鮮明に覚えているのが、私の小学校では日替わりで1〜6年の各クラスが好きな曲を選んで、給食の時間に全校放送で流す制度があり、かなり長い期間毎日連続でモーニング娘。の『ザ☆ピ〜ス!』が流れていた。
クラスで一曲選ぶと言っても、その権限は「クラスのイケてる女子」が持っており、それがどのクラスも漏れなくということだから、当時は学校の殆どの女子がモーニング娘。を好きだったんじゃないかと思う。
話は逸れたが何故劔さんの仲間が羨ましく思えたかというと、まさしくこの時期(『ザ☆ピ〜ス!』がリリースされたのが2001年でそれから2、3年)僕もかなりモーニング娘。が好きで、しかし当時も今も全くイケてない私が田舎ながらにキラキラした女子を前にモー娘。好きを公言できるはずも無く、「絶対こいつらより好きやわ」と思いながらも悶々とした日々を過ごしていたからだ。
私もあんな風に深夜にライブ映像を見て語り合える仲間が欲しかったし、周りが引くほどオープンに彼女たちを応援したかった。
(全然関係ないけど、中学の頃男子の間で洋楽ブームが巻き起こり私も好んで聞いていたが、実はこっそり浜崎あゆみのファンクラブである「TEAM AYU」に入っていた。「友達できたらいいな〜」と一人で参加したライブだったが、私が声をかけても良さそうな人は見当たらなかった。今思えば青いライトで装飾され、「Team Ayu」とデカデカとペイントが施されてある軽自動車に乗るような輩と話が合う訳が無い。)
私が大学生になる頃にはAKBを筆頭にアイドルは雲の上の存在ではなくなり、そんなハードルの低さからか、現場にお洒落なお兄さんや可愛い女の子がいることも決して珍しくはなく、そのせいで記号的というか、分かりやすい容姿のオタクは現場であるにも関わらず冷たい目で見られるようになった。
私が小学生の頃見た、ライブでハチマキを結び、法被を着てはしゃいでいたおじさんはもはや絶滅危惧種なのかもしれない。(ハロー!はその点歴史が長いのでそういう人が多い気がする。それが羨ましい。)
事実、私もそんなおじさんを見てクスクス笑ったものだが、アイドルを心から応援して、「今」を楽しんでいたのは間違いなくあのおじさん達のほうだ。
一生懸命に歌って踊る彼女達を一生懸命声を出して応援する。
そうじゃないとダメなんだ。
劔さんたちはそういう意味でも、数年前の私より数倍アイドルを楽しんでいたと思う。
人を見て笑っているようじゃ「今が一番楽しい」なんて言えない。
5年後、10年後、20年後、彼らのように「今が一番楽しい」と。その上で「あの頃も楽しかった。」と、そう言える大人になりたい。
楽しい人になりたいな〜。
モーニング娘。 『LOVEマシーン』 (MV) - YouTube