12. 憧れ

「夢」と書きたかったが、現在の自分にはとてもそれを「夢」と言える勇気はなかった。

諦めもついているし、「憧れ」と言ったほうがダメージを受けずに済む。

 

昨日実家に帰り、夜な夜な母と二人で録画していた「徹子の部屋」を見ていた。

ゲストは日本刺繍作家の草乃しずかさん。

画面にはため息が出るほど美しい日本刺繍が映り、草乃さんが一点一点作品に対する想いを語る。

f:id:ann0828:20130830125335j:plain

番組終盤では年末から開かれる展示会のお知らせが。

草乃しずかの世界展 一針に祈りをこめて40年 | 松屋銀座 | 展覧会・イベントの検索 | 美術館・博物館・イベント・展覧会 [インターネットミュージアム]

 

去年か一昨年だったか、草乃さんの展示会に足を運んだ際に、私と同じくらいの歳の女性を見かけた。友人と来ていた彼女はじっくりと作品を見つめ、「私も将来はこんな作品が作れるようになりたい。」とつぶやいた。その言葉だけでは正確なことは分からないが、彼女の真剣な眼差しは単なる見物客のそれではなかったように思えた。

 

自分で言うのもなんだが私は結構手先が器用で、家庭科の裁縫なんかは人一倍早く作品を仕上げていたし、不得意な子の分まで縫ってあげたりと唯一誇りを持つことができる長所だった。勉強が大嫌いだった幼い頃の私は、「将来は自分の手で、手に取った人の心を奪うような作品を作りたい」と思うようになった。何でも良かった。絵でも織物でも刺繍でも映画でも絵本でもお菓子でも何でも。

ただ漠然と「自分の手で直に価値のあるモノを作り出したい」という想いがあった。

 

そんな想いを今でも完全に捨てきれない私には、彼女の姿がとても眩しく見えた。

 

先日、プロフェッショナルで人間国宝である染織家の志村ふくみさんが特集された。

f:id:ann0828:20131227155216j:plain

 

 志村さんは語る。

「まだ手に触れていないような、目に見えて無いような色があるかなと思っています。導きの書はないけど、導きの色はある。それを追い求めているんです。」

志村ふくみ(2013年5月27日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

 

89歳にしてこの向上心と好奇心。

染織家として成功するまでに数々の苦難を乗り越えてきた志村さん。壮絶な過去を振り返る志村さんの苦しそうな顔は私の「夢」を「憧れ」に変えた。

 

両親の言われるがまま、大嫌いな勉強になんとなく取り組みなんとなく大学に入って今に至る。勿論私なりに色々考えたし、両親には感謝している。仮に刺繍作家や染織家を志したとして、それで成功しご飯を食べていける可能性は低いだろう。人より少し器用なんてレベルでは到達できない世界だろうし、何よりそれまでに待ち受けているであろう困難に立ち向かう勇気、情熱を持って根気強く取り組める自信が無かった。

 

昨日の徹子の部屋は、そんな意味で色んなため息がでる内容だった。

福岡でも教室をやっているみたいだから来年通ってみたいな~と思ったり。

 

先日見た「スプリングブレイカーズ」のサントラがかなり良かった。


SKRILLEX - Scary Monsters And Nice Sprites - YouTube